金澤流麺物語

金澤流麺らーめん南の店長南大祐の独白ブログです。こちらは営業内容やらーめんそのものとは関係のない日常的な話や、店長の趣味格好などを書いていくブログです。

金澤流麺物語 第221回

まず一枚の写真を見てください。
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僕の右に写る好青年はダイチ。
早稲田大学に通う大学四年生です。
高校の先生になるという目標のために日夜勉学に、そして大地が青春をささげた早稲田大学応援団として活動を熱中して行っています。

ダイチとの出会いはもう13年前になります。
僕は27歳でした。
僕の一番初めの独立した店舗『らーめん高はし家』のお隣の寿司屋の倅です。
その頃のダイチはまだ小学四年生でした。
二歳年下の弟のヒロキと二人で辻堂中を駆け回る元気いっぱいの男の子でした。
いつも僕の店に入ってきては「ねーねー!おじさん!休憩中!?キャッチボールしようよ!」とこっちの都合などお構いなしに絡んできました。
時々行き過ぎたことをするので、僕もまだちょっと若かったのかな、きつく怒ったりすると「この店の大人は大人げないよ!!」ともう何も言い返せないような事を平気で言ってくる子供でした(笑)

一緒にキャッチボールをしたり、銭湯に行ったりしてたのがつい昨日の事の様に思い出されます。

双子の様に行動を共にしていたダイチとヒロキも大きくなるにつれてそれぞれの個性がはっきりとしてきました。
元気なやんちゃな男の子、といった感じの弟のヒロキに対して、ダイチは独自の世界観を持つ子供でした。
放課後も友人と遊ばずにテレビ局に出かけてアナウンサーの出待ちをしたり、マイ法被(!!)を作ってまるでトランス状態で盆踊りをしたりと、普通の学生とは少し違う雰囲気を持っていました。
思春期に入るとヒロキは急に恥ずかしくなったのか、僕に対して遠慮がちに話すようになりましたが、一方のダイチは「ねーねー!南さん!あれ知ってる!?」と人懐っこく話しかけてくる様子は幼いころから全く変わりませんでした。
そんなダイチも大学受験に合格し、いよいよ入学を控えたある日、僕の店にらーめんを食べにやってきました。

「ダイチ、大学生になるんか。どやねん?サークルにでも入るんか?コンパとか行って彼女作れや」とちゃかし半分で言った僕にダイチはこう言いました。

「いや、南さん、僕、大学四年間で自分はこれをやり遂げた!って思えるものが欲しいんだよね。だから応援団に入ることにしたんだ」

「応援団!?お前大学に入ってからも学ランとか着るんか!?」

「うん、もう決めたんだ」

それからダイチは応援団の活動を本当に頑張りました。

普通の学生が私服で通う早稲田大学に詰襟にドカン、ヘアスタイルはオールバックで随分硬派なルックスになりました。
しかし応援団として活躍した時間は確実にダイチを大人の男にしました。
それまではまだ世間を知らないあどけなくて不安そうな眼差しは、この三年間で瞳の奥に落ち着きと思慮深さを湛え、「ねーねー!南さん!」と仕入れたばっかりの最新情報をいつも得意になって教えてくれたその言葉は、意味をしっかり考えて発言されるようになりました。
ダイチの気合溢れる応援は六大学野球でも注目を集め、テレビではピンショットで映ったり、ツイッターで『早稲田の応援の本気度、半端ない」と見た人が息をのむような迫真の応援でした。

そんなダイチが先日、なんの前触れもなく来店してくれました!!

「なんでお前ここにいんねん!?」と驚く僕にこともなげに

「いやぁ、富山県に応援があって、こんな機会でもなけりゃなかなか南さんに会えないし」って。

僕は驚きと感動で本気で泣きそうでした。

帰り間際、僕はダイチに問いました。

「どうや?応援団で何か刻めたか?」

するとダイチは少し嬉しそうな、そしてそろそろ応援団を引退するさみしさの入り混じった表情を浮かべて

「うーん?卒業したらわかるのかな?」

そういう表情はすっかり大人の男のそれでした。

ダイチ、本当に立派になった。
高校の先生を目指すダイチ。
いつも自分の甥っ子みたいに感じていたダイチ。
なんか俺だけが取り残されたみたいな、少し寂しい気持ちになってしまいました。
でもこうして一人の少年が大人になっていく様を見守ることができたことは本当に幸せだし、もう何年かして金澤流麺らーめん南ももっと安定して、ダイチは先生としてのキャリアを重ねて、そして今住み込みで寿司屋の修業をしているヒロキが一人前に握れる日が来たら、その時は大人の男同士としてヒロキの働く店に寿司を食べに行こうな。
その時はダイチの苦労や夢を聞きながら、ヒロキの誇らしい寿司職人としての顔を見ながら酒を飲みたいな。

約束な。
必ずいこう。

明日もあなたがやさしくありますように。
明日もあなたがあなたらしくありますように。

そしてダイチとヒロキがどんどん大人になっていっても、いつまでもあの頃の無垢な瞳が垣間見れますように。
その時俺は二人に人生の先輩として胸を張れるようなラーメン屋になれていますように。

LOVE & BEER!

そして

RAMEN & ROLL!!