金澤流麺物語 第210回
金澤流麺らーめん南のグランドオープンも間近に迫ったとある日、中学時代のラグビー部の仲間が金沢に出張の際にわざわざ時間を作って店まで来てくれました。
その友達の名はみっちゃんとしておきます。
みっちゃんに試作中のらーめんを食べてもらい、その後片町に飲みに行こうと約束をしていたのです。
みっちゃんとの再会はおよそ21年ぶり。
19歳に会ったのを最後に全くもって音信不通でした。
最近ではよく聞く話ですが、みっちゃんとはフェイスブックを通じて再開し、湘南の僕の店に「いつか食べに行くから」と言ってくれていました。
みっちゃんが湘南に来るより先に僕が石川県に引っ越したので、たまたまみっちゃんが金沢に出張の仕事が入ったので金沢での再会を果たすことが出来ました。
みっちゃんはこのブログをずっと読んでくれていたらしく、僕の店に来るなりこう言いました。
「大さん、ブログ読んだで。あれ読んでるとな、なんか大さんえらい頭ええ人みたいに感じるけど、大さんがあんま頭良くないの俺知ってるねんかぁ。なんなんあれ?詐欺?ゴーストライター?」
えらい言われ様です。
「なんでやねんな!俺子供の頃から読書家やったやん!頭は良くないけど文章書いたらあんなんなんねん!」
「読書家?大さん、週刊少年マガジンしか読んでなかったやん」
ズコ!
かと思えばこんなエピソードもありました。
高校時代、ラグビー部の後輩が僕の一人暮らしをしていた部屋に何人か「南さん、相談に乗ってくださいよ」とやって来た時の話です。
ポテトチップスやコーラを買い込んで、僕の部屋に集まって「ほな、なんやねん?相談って?」と話しを聞こうとしたのですが、後輩は僕の部屋をキョロキョロして少し訝しい顔付きをしています。
そして僕の方へ向き直りいきなりこう言いました。
「南さん、こんな本読んでんすか?気持ち悪いっすね」
僕の本棚を見た後輩は相談してもらう気も失せたのか、ポテトチップスを食べてバカ話をして帰っていきました。
その時に本棚にあった本が
・アルベールカミュ『異邦人』
・フランツカフカ『変身』
そして
ショーペンハウアー『自殺について』『読書について』
でした。
無骨で頭も筋肉で出来ているようなラグビーの後輩(失礼)からしてら、きっと気持ち悪かったのでしょうね。
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前回のブログで音楽について書いてみました。
今回は読書が僕に与えた影響を書いてみようと思って、本棚や本を収めた段ボール箱を探してみましたが、今回のタイトルにも使わさせてもらったショーペンハウアー『読者について』が見つかりませんでした。
引用してみたい箇所があったのですが。
しかしこの二冊が出て来ました。
・中原中也詩集
です。
これ、二冊とも中学一年生の時に買った本です!
しかも、古本屋で!!
ですからところどころページが湿気ですやられていたり、紙がうすくなっていたり、活字なんて昔の文庫本ですからとても小さいです。
本はどんどん処分したり人に譲ったりするのですが、自分の原点みたいな本がこうして荷物の片隅に残っていたことがなぜかとても嬉しかったです。
ページを開いて少しだけ読んでみましたが、もちろん10代の頃のような感動や興奮があるわけではありません。
感受性も変わっているし、何より僕はまだ何も知らなかった13歳の頃よりかは、ちょびっとだけ人生の辛酸を舐めて来ましたから。
でも10代の頃に受けた影響や感動があって、今のらーめん屋の僕がいて、今お客様に食べていただいているらーめんがあります。
全部全部一直線に繋がっています。
まだ、過去の物になりきらない、変わらない瑞々しさがきっと40歳の僕にもあります。
そんな感受性や感性を磨かしてくれたのは、間違いなく読書体験です。
次回、ショーペンハウアーの『読者について』を少しだけ思い出しながら、読書が与えてくれた影響について書いてみたいと思います。
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最近お客様の中で「ブログ読んでます。仕事も大変だと思いますが、更新も楽しみにしてます」なんて言ってくださる方が増えて来ました。
元々らーめんそのものと関係のない話ばかり書いているブログですが、ここに書いている話は全部今のらーめんへと辿り着いています。
読んでくれた事で僕のらーめんへの理解が増してくれたら嬉しく思います。
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あなたが明日も優しくあります様に。
あなたが明日もあなたらしくあります様に。
LOVE & BEER!
そして
RAMEN & ROLL!!