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金澤流麺物語

金澤流麺らーめん南の店長南大祐の独白ブログです。こちらは営業内容やらーめんそのものとは関係のない日常的な話や、店長の趣味格好などを書いていくブログです。

金澤流麺物語 第150回

マンパワー

その抽象的ではあるが
どこか説得力のある言葉は、
修業中の身だった若き日の
僕の心に刺さったままだった。

それからというもの
僕は常に網野さんの仕事を
目で追うようになった。

まだ修業を始めたばかりの
僕よりも網野さんの方が
らーめんを美味しく作れることは当然だ。

ではそれ以外で何が違うのだろう?
網野さんのいう
マンパワー
とは網野さんの仕事の
どこから感じる事ができるだろう?

考えれば考えるほど、
網野さんの仕事を目で追えば追うほど、
僕は『マンパワー』が何を
指しているのかが
分からなくなっていった。

その中で一つだけ
気づいた事があった。

網野さんはお客様受けが
抜群によかった事だ。

らーめん屋は居酒屋やバーのような
会話をメインにした接客がなかなか難しい。
忙しくなればなおさらの事で、
どうしても注文をこなす事に
追われてしまいお客様との
密な関係はなかなか築けない。

その中にあって網野さんが
ホールを担当する時間だけは
どこか雰囲気が違った。
どれだけ混んでいても、
どれだけお待ちのお客様が出ても、
雰囲気が乱れないのだ。

それを僕は最初は
「さすがは網野さん、上手に回すなぁ」
なんてテクニックでどうにか
しているんだと考えていた。

しかし網野さんの仕事を見ている
うちにその考えは間違っていた事に気づいた。

確かに網野さんは仕事ができる。

しかし仕事上のテクニック以上に
網野さんはさりげない一言で
お客様を和ませたり、
笑わせたり、
待っているお客様を
雰囲気や言葉でケアできる
力を持っていた。

お客様とつかず離れず、
絶妙な距離を保ちながら
丁寧に案内をしたり
的確で正確で伝わりやすい
オーダーの通し方をしていた。

その仕事内容には
『大人の余裕』
が感じられた。

「・・・あれは俺にはできないな」

そう思った当時24歳の僕は、
マンパワー』を
『人間味』と
自分なりに翻訳することにした。

網野さんの真似はできない。
自分は網野さんほど
落ち着いた人間ではない。

でも自分にしかできない
人間味の出し方があるんじゃないかな?

それが僕が網野さんから
受けた最初の『気づき』だった。

以下次回に続く。