金澤流麺物語 第140回
モトイが僕にくれた手紙。
「ずっと親友でありライバルでいてくれ」
この手紙からもう何年が経っただろう?
モトイはこの手紙を書いた日から
どれくらい血の滲む努力を重ねただろう?
僕はこの数年間、
自分を高める努力を重ねる事が
出来ただろうか?
正直なところ、自信がない。
・
振り返れば本当に大変な毎日だった。
よく体が持ったと思う。
一年半もの間、休みがないなんて
我ながら信じられない気持ちになる。
でもそれは料理人として
腕を磨くのとは全く意味が違う。
僕はひたすら輪の中を永遠に
走り続けるネズミの様に
延々と走り続けていただけだった。
毎日毎日、出口の見えないトンネルを
全力疾走している様な日々。
自分がどこに向かっているのかも
解らなかった。
僕がそんな毎日を過ごしている間、
モトイは自分の夢と目標を叶える為に
努力を惜しまなかったのだ。
・
もし僕に若い頃から
目的意識や
夢や
目標があれば
どれだけ良かっただろうか。
・
なんで僕みたいな
はみ出し者で
迷惑者で
チンピラまがいの
くだらない男が
こうして生きていけるのだろうか。
・
時々、
ほんの時々。
生きている事に
罪悪感を覚える夜がある。
下らない人生だ。
死んだ方が世の為だ。
僕みたいな人間が
夢を語るなんて
ふざけんじゃねぇ
本気でそう思うよ。
・
でも、
とんでもなく
大切な友達が
あまりにも多くって
歩みを
止めるわけには
いかないんですよね。
恩をしっかりと返したい。
・
僕はほんまに
恵まれている。
なんでこんな
みそっかすの
失敗だらけの
半生を歩んできた
僕を応援する人がいるのか。
・
本気で不思議なんだよ。
・
でも、
京都で生まれて
ややこしいこといっぱいあって、
回り道して
人にいっぱい迷惑かけて
それでも
こうして
もう一度スタートを切ろうとしている。
・
だから
何か
足跡を
刻みたい。
出来たら
人々に
希望を
そこまで言うたら
嘘臭いかなぁ。
出来たら
束の間でええから
笑顔を。
おこがましいかなぁ。
でもやっと素直になれた。
明日、
もしかしたら明日、
僕たち
死んじゃうかも知れない。
だから、
今日も
まっすぐ歩こうと思う。
どんな結果になったって。
・
・
あなたが明日も優しくありますように。
あなたが明日もあなたらしくありますように。
LOVE & BEER