金澤流麺物語

金澤流麺らーめん南の店長南大祐の独白ブログです。こちらは営業内容やらーめんそのものとは関係のない日常的な話や、店長の趣味格好などを書いていくブログです。

金澤流麺物語 第52回

以前にもこのブログにアップした
動画ですが、もう一度貼り付けます。
ぜひご覧になってから本文をお読みください。

 

https://www.youtube.com/watch?v=d6XHGy00Fnk

僕が海辺の町を離れる時に行われた
送別会での龍麿さんとイットさんの
ライブの模様です。

龍麿さんがこの日の為に
書きおろしてくれた楽曲で、
もうこの日以外に演奏する事も
リリースする事もないという
本当に贅沢な曲です。

当然と言えば当然なのですが
最初に断っておきます。
会場にいるお客様が
全員この曲は初見です。

それなのに冒頭の
「・・・手拍子」
の一言で全員が手拍子を行い、
始めての歌なのに全員で
合唱が出来る・・・。

龍麿さんのキャリアに裏付けされた
実力を皮膚感覚で感じられる
素晴らしいステージでした。

初めての歌で合唱できる
くらいですから、
動画を観ていただいても
歌詞が良く聞き取れると
思います。

その中で
『初めて出会ったその夜に
めちゃくちゃに暴れてた』
という一節で会場の全員が
爆笑するシーンがあります。

この歌詞のエピソードは
ブログ第22回に譲るとして、
なぜ笑いが起きたかと言うと・・・。
この場所にいた全員が僕が
暴れている場面を
容易に想像出来たからです。

それほどまでに僕は酒癖が悪く、
この町で問題や不祥事ばかりを
起こしてきました。

だからこんな温かい
送別会を開いて貰えて、
そしてプロのミュージシャンに
一夜限りの曲までプレゼント
してもらえるなんて、
普通に考えたら分不相応な話なんです。

僕はあまりにも苦しかった
海辺の町での生活にピリオドを打ち、
会社を辞める事を決意しました。
後は社長に「辞める」といつ言おうかと
考えていました。

ある日また理不尽で意味の解らない
説教をされた時、
「もう今しかない」
と思い辞意を伝えました。

これまでの僕と社長の
やり取りを鑑みても辞めさせない様な
恫喝に近い説得が行われっる事を
覚悟していました。

僕に課した多額の借金は
僕を会社に縛るための作戦だとも
思っていましたから。

しかし「辞めたい」と伝えた時の
社長の反応は意外なものでした。

「あ、そう。
辞めてくれるんだ。
嬉しいよ。
やっと辞めると言ってくれて。
清々するよ。
これで昔からいる人間が
全員いなくなる。
これからは新しい人間と
一から築いていけるよ。
やっと辞めるって言ってくれたな。
ありがとうな」

僕は呆気に取られました。
こんなに簡単に辞めれるなら、
とっとと辞めれば良かった。

僕は何に責任を感じて、
何に義理立てして頑張って来たのだろう?

そして社長はこうも言いました。

「お前が辞めてこの町を離れる事は、
誰にも言わずに静かに消えろ」

そう言われて僕もその様に思いました。
自分の名前のついた屋号の店で、
自分が作り上げた味の店で、
その自分がいなくなる・・・。
これほどの都落ちはない・・・。
恥ずかしいから一人静かに
この町から消えよう・・・。

そう思っていました。

でも最後に挨拶だけ
しておきたい人がいる。

女友達のれいこさん
行きつけで散々迷惑をかけた
ナミマチキッチンのマスターの
ハルちゃん。
もうひとつ行きつけの
残心のマスターの佐藤さん。

この三人にだけは挨拶をしてから
この愛着のある海辺の町を去ろうと
決意しました。

ハルちゃんは僕の前では表情も
変えずに「あぁ、そうなんだ」で
終わらせましたが、
あとで聞いた話によると
そうとう落ち込んでいた、
との事でした。
その後に僕から連絡をして
二人でゆっくり話したかったのですが、
忙しかったのでしょう。
返信を貰えなかったので
これが最後の別れになりました。

そしてれいこさん
「何言ってんの?
静かに消えるなんてバカじゃないの?
そんな事をしたらこの町の人間、
全員が大ちゃんの事を怨むよ!」
と本気で怒ってくれました。

そして佐藤さん。
「・・・大ちゃん。
最後に祭りしようよ。
一発やらかそうよ」

そう言ってくれました。

この三人には同じ日に
金沢に帰る事を伝えました。

この日から僕の油が固まって
動かなくなっていたような
人生の歯車が、
音を立てて動き出します。

つまりは、
僕の人間回復が始まるのです。

以下次回に続きます。